奇譚クラブ
58 本誌『緊縛絵画』論
59 公開通信 土路草一氏へ
60 雌雄
夜は知っている
被虐のシルエット
(続・夜は知っている)
異端者の道
(続・夜は知っている)
道下キミ(K化学工業労働組合女子部長、体重15貫)。小夜子(キミのレズ相手で、マゾペットだった?)。俊介(小夜子の結婚相手)。キミはリストラに反対し、ストライキ中拉致される。その後、やくざの女になったとのうわさ。一方、俊介と小夜子は、新婚旅行に、そこで小夜子は、キミにかわる新たなご主人様、俊介に奴隷の誓いをたてる。
投稿・田所表川様
61 奇ク私見
-エロとどきつさについて-
岩崎一生氏に答える
63 サジズムと変形譚
66 のおと・あと・らんだむ
(2~5 7~9,11月号にも掲載)
67 縄のある蜜月〈門出〉  葉山猛(32歳)は、自分から積極的に近づいてきた上林倫代(専務の親戚の娘、才気あり、美貌、非処女)とローププレイを楽しんでいたが、会社で一番目立たない女淑子(よしこ、やぼったい服装、おとなしい性格)と結婚し、夜の列車で新婚旅行へ旅立つ。二人は婚約中、接吻さえしたことがなかった。猛が淑子に魅かれたのは、陶器のような白く冷たい美しい肌だった。
投稿・田所表川様
縄のある蜜月〈初夜〉  旅館の離れで猛は自ら用意して持参した紅絹(もみ)の長襦袢を風呂上がりに着ることを淑子に命ずる。後手胸縄にして、その乳房(豊かな、むっちりとした、たわわなふくらみ)を楽しみ、床柱を背に、あぐら縛りにする。「淑子は今夜、縛られたままで女になるのだよ」
二十数年の歳月の間ひそやかに芽ぐくんできた薄紅の肉厚の花弁はあでやかに咲き拡がり、甘い蜜をとめどもなくしたたらせて、したい寄る蜜蜂の触覚の下におののいていた。
一夜明けて、風呂場でタオルで縛られ、初めて口唇で猛を受け入れる。縛られて思うままにもてあそばれるという羞恥と屈辱の極点から、どうして、あの身も世もない恍惚の渕におぼれるようになるのか、淑子には我が身のことながら理解できなかったが、それを淑子の肉体は素直に受け入れ、それを心ゆくまで味わった。
投稿・田所表川様
縄のある蜜月 (隣の女)  新婚旅行中、一週間同じ宿で、新妻淑子を昼となく夜となく調教する猛だったが、4日目離れの先を散歩し、崖の上で海をおもいつめた瞳で見つめる若い女性に出会う。その女性マリは、新婚初夜、夫秀夫に処女かと問われ、うなずき、その嘘がばれ、夫は出たっきり。マリは高校3年生の時、学生3人に輪姦されたのだった。自暴自棄に陥ったマリは、猛に「奪って、めちゃくちゃにして、殺してもいいわ」という。
猛はマリを自分の離れの宿に誘う。そこには猿轡をかまされ、肘掛けいすにM字開脚で全裸をさらす淑子の姿があった。
猛はマリと夫を仲直りさせる一計を案じる。
投稿・田所表川様
縄のある蜜月(日常)  淑子は猛の手で変えられた。淑子のがわの変えられようとする受身の意志と猛のがわの変えようとする欲望が、まれに見る二重奏をかなでて、官能の花弁がおののきながら花ひらいた。
パンティ禁止・専業主婦・和服。
猛が淑子を妻にめとった真の理由は、淑子を調教して自分の思い通りの女に仕上げること。
猛のプレイへの欲求は突然的だった。
猛が淑子をおそうのは、淑子が猛を少しも意識していない時が多い。一糸まとわぬ姿で夕食の料理を強制されることも、一度や二度ではなかった。縄尻を居間とキチン(2DKに住む)をへだてるカーテンレールに結びつけて、淑子を立ち縛りにさらしたままや、椅子の下にあぐら縛りに床に坐らせ、口で奉仕させながら、猛は夕食を楽しんだ。
くれのボーナスが出て、銀座のホテルで落ち合う。淑子が部屋で待っていると、猛から電話がかかってくる。「帯を解きなさい」「きみがぼくの言う通りに裸になったことは信じているよ。だけど確証がほしいんだ」「聴覚を通して、きみが全裸であることがわかる方法がだだひとつだけある」 
やがて、─あたりをはばかるようなひそやかな音が、レシーバーの奥から聞こえ始めた。それは、恋人同士が熱烈な接吻をかわしている時にたてるような、仔猫がミルクをなめている時にたてるような……そんな音だった。
投稿・田所表川様
縄のある蜜月 (蜜月の終わり  冬、土曜日の夜、猛は上林倫代を伴って帰ってきた。二人の愛情に満ちた家庭生活の秘密を是非見せてくれ、という。猛は淑子に裸になることを命令し、倫代にベルトで鞭打ちさせる。翌朝、猛は淑子に結婚前に倫代と関係があったことを告白する。実は、結婚前にその話を淑子は倫代から聞かされていた。そして、淑子は「どんな変態でも、あるいは殺人狂でも、愛は変わらない」と言い返していたのだった。
ふたりの愛はこれで終ったわけではない。だが、蜜月は終ったのだ。

投稿・田所表川様
夢幻譜 過ぎ去った夏
68 縛り映画のことなど
愛妻記
69 「徳川女刑罰史」に思う

 この映画の展開は、死刑になる女性がフシダラだったので極刑は当然という印象を与え、哀切感が希薄。 責め映画は、無実を訴える女性が拷問に屈し極刑になるような胸つぶれるものが必要。 責めに至るまでのムードつくりが安易で、途中で飽きてしまった。

カメラは選択と抑制を行うから表現になる。この映画は縛り監修の辻村氏の縛りが見事であったために、監督は表現を忘れてしまったのではないか。
(「徳川女刑罰史」は68年に公開された東映のサドマゾ時代劇のひとつ。三話のオムニバス。B級だが大ヒットし、見世物性は高く評価される一方、マスコミからは激しく叩かれた。)

「花と蛇」について
ポルノグラフィティー
(奇クに掲載された「花と蛇はマンネリだ」という批判的な投稿を紹介して)その通りだと思うがしかし、(私が熱狂的なファンである渋沢竜彦氏が、画家ビアズレーの「美神の館」の解説でコロンビア大学でポルノを研究する教授の文を引用したものを紹介して、ポルノとは終わりのない反復の物語だから)花と蛇がマンネリなのは当然である。 飢えた読者はどんなものでもポルノに仕立てることができる。(当時創刊されたSM雑誌)「血と薔薇」で吉行淳之介が「猥本は妄想を文学で表したもの」と書いたのはまさにそのこと。 花と蛇が繰り返し描くのは、セックスに縁遠い女性に快楽の極地を教え込むことであって、羞恥責めはその手段に過ぎない。 また渋沢氏は「拷問について」で「処女が我にもあらず肉の快楽に負け、その精神が肉体の共犯者となって屈服するのは、思想犯が拷問の末に転向する過程とそっくり」 「花と蛇」の中で美女に加えられる快楽のテクニックを「責め」と表現するのはまことに当を得ている。
縛り随想~プレイのあいま 十数年も暮らしてきた妻を縛ってヤニさがっている。ベテランからは「古女房なんて」と冷やかされることも。 縛ってやると肌が張りを取り戻すようで、妻も胸の縄がけにはあれこれと文句を並べる。かつての妻の乳房は理想的な形状だったが、もうズダ袋に等しい。古女房から夢をしぼり出すのなら背中に限る。 私のプレイが直感的(編・ワンパターンという意味だと推察)なのは、縛りは前戯の一形式であって縛らなくてもいいと考えているからだろう。 最近あぐら縛りと股間縄を覚えた。転がしておいた女房を、今日はあぐら縛りで責めてやろうか。
70 幻のプレイ~一枚の写真  北陸の町に住む私は、公務で仙台に出張する。その往復に東京を通る。東京でSM写真家?のK氏から一枚の写真を手渡され、出張の帰りに、その写真の女子大生をモデルにした撮影に立ち会えることになった私は、仙台での仕事を終え、東京に向かう夜汽車の中で、その写真が撮られた情景を想像し、渋谷にあるK氏の仕事場へ向かう。
一枚の写真を穴が空くほど見入り、その写真がうつされた前後の状況をこと細かに想像する。
投稿・田所表川様
盲(めしい)  権造は、白内障のために盲人となった高利貸しで、妻とは死別している。一人娘のお慶(二十歳)は、鬼小町とあだなされるも、けなげに家業を手伝っている。権造は、借金のカタにお絹を手込めにしようと、使用人の清次(治)に段取りさせる。半年前まで晴眼者であった権造の、触覚から得たれた情報を視覚へのイメージの復元作業を丹念に描写している。
投稿・田所表川様
男が女を殺す時  高木刑事は殺人を犯した大学生(写真部)の動悸が納得できず、殺人犯の自供をうながす。かれは、人妻(小田切美沙子、27,8歳)といい仲になっていて、その女が心変わりしたわけでもなく、夫(40がらみ、有名企業の課長)に気付かれて三角関係が破綻を生じたわけでもないのに女を殺したのだ。
東京駅の新幹線ホームで目にした和服の美しい女を、偶然と幸運が重なり、尾行して、夫が一週間福岡に出張したのを知り、マンションに押し入り、犯し、写真を撮り、それをネタに関係を続けたのだった。

自供「美沙子はマゾだった。ぼくが彼女に一番魅力を感じたのは、どれだけ逢い引きを重ねプレイを重ねても、決してなれなれしくなったりしなかった点なのだ。いつまでたっても美沙子は人妻としてのつつましさを忘れず、夫の目を盗んでいるという罪の意識を心からぬぐい切ることはできない風情だった。それがたまらなかったんだ。つつましやかなうわべが、内からせくり上げてくる欲望に次第に打ちまかされてゆく、その哀しいまでな女の生理といったものを見るのが、たまらなかったんだ。」

ある日、否応ない衝動にかられて、前もって連絡なしに家を訪ね、プレイ道具を持参しなかったことに気付き、何か縛るものはないか、とたずねると、美沙子はどす黒く汗と脂のしみ込んだロープの束をとりだしたのだ。〔和服に使うひもでも出せばよかったのに……〕
そのロープを見て、犯人は逆上する。おれは道化師にすぎなかった。おれが美沙子に植えつけ花を咲かせたと信じ込んでいたものが、実はおこぼれを与えられていたのだった。それを大きな屈辱と感じ、代用品だった、と。
美沙子「あたし、あなたの手で初めて満たされたのよ。もう、あなたから離れられない女に、美沙子はなってしまったのよ。美沙子が悪かったのならきつく縛って。打ってもいいのよ。どうにでも罰して……」
逆上した犯人には、美沙子の弁明も耳に入らず……。
投稿・田所表川様
71 「花と蛇」の終焉を知って
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