裏窓  久保書店
60 能面の女はもだえる(絵物語) 仕事で訪れた冬のK市で深酔いした私は、路地で20代半ばの女性に声をかけられる。
能面を思わせる、雪女のような彼女の妖気に惹かれた私は、彼女が売春婦であろうと思いながら、誘われるまま彼女の家へと赴く。待っていたのは、彼女の夫らしき中年男による、彼女への激しい折檻だった。
全裸のまま雪の庭へ蹴りだされた彼女は竹林に大の字に縛り付けられると、雪攻めで冷やされた身体にさらに摩擦攻め。たまらないむず痒さは毛虫が這いまわるように彼女を襲う。
耐え切れずに口をもれる悲鳴が、やがて切なげに長く尾を引く呻き声に変わって行った。
翌日、裏路地でうずくまっていた私は、彼女からの手紙を見つける。そこにはサジストの夫の元を逃げられない苦しい事情がしたためてあった。しかし私は、彼女もマゾとして開眼したことをここに書きそびれたに違いないと確信するのだった。
61 人が消える沼の家  友人の山奥の別荘に彼女と一緒に招待された主人公。そこで友人の美しい妹を紹介される。
数日後、友人の彼女が姿を消し、次に主人公の彼女がいなくなる。
密かに地下室を探索した主人公が、大型冷蔵庫の中に見たのものは・・・。
錯誤の犠牲者  密輸の取引に北陸の漁村に来た中年主人公は、カモフラージュのために連れてきた妻と娘を何者かにさらわれてしまう。敵対する組の者のしわざに違いないと思いつつ、指定された場所へおもむくと、現れた三鬼という男はただ「吐け」というばかり。一体?
“O嬢の物語り”とマゾヒズム
切腹の悲壮美について
責め具製造人(絵物語) ギョロリのじいさんと呼ばれる嫌われ者老人は、表向きは家具職人だが、実はマニア向けの拷問具職人だった。 戦後の混乱期、田舎町のじいさんの工房にだけはひっきりなしに乗用車が乗り付けるのは、成金たちが拷問具を発注するために訪れていたのだった。
 映画監督が撮影用の拷問具の発注にくる。監督が連れていた女優は、じいさんがかつて浮気されて責め殺した妻にそっくりだった。 錯乱したじいさんは工房に女優を呼び出し、妻と同じように木馬で責めようとするが、じいさんは突然の発作で急死。そのときランプを倒してしまう。木馬の上に縛り上げられたまま女優は炎にまかれるが、すんでのところを駆け付けた監督に助け出される。
じゃじゃ馬馴らし
スリルは引き合わない
セールスマンに御注意  若妻・節子は夫の憲吉に浮気を疑われて拷問を受けいていた。風呂場にライターがあったのがその証拠だというが、浮気などしてない節子はセールスマンの忘れ物だという。ライターで節子を炙る憲吉。
 連日の拷問で、次第にマゾとして目覚めていく節子。憲吉の贈り物の革のブラジャーにも慣れた頃、ライターを忘れていったセールスマンが再来する。ライターを返そうと節子が部屋に戻ったのを追ってきて襲い掛かるセールスマン。助けに入った憲吉と揉み合いになり、塩酸のプールにセールスマンを突き落としてしまう。節子が見た時には、セールスマンはもう骨とわずかな肉だけだった。
 自分のために殺人まで犯した夫に節子は強い愛を感じる。
 後日、憲吉と例のセールスマンが喫茶店でヒソヒソ話。すべては憲吉が妻をマゾ調教するために仕組んだ芝居だったのだ。憲吉のカバンには新たに購入した責め具が入っている。
スリップはもうゴメンだ  おれは女性の下着泥棒が趣味。干された下着から美女の姿を「創造」して、最高のものだけを頂く主義。住宅地で垣根の上に風に飛ばされたスリップを見つけた。持ち主らしき、中庭で洗濯してるのは美女・マチ子。(金ダライで手洗いしてるのがさすが30年代)スリップは頂いたが、彼女のパンティも欲しい。
 深夜、出直したおれは謎の男たちに捕らえられる。連れ込まれた部屋ではマチ子と見知らぬ女性・ユリが捕らえられていた。男たちは昼間のスリップを探していた。ユリが麻薬密輸の情報を隠して窓から飛ばしたがあのスリップだったのだ。男たちは近くにいたおれが拾ったか、マチ子が自分のものと間違えて取り込んだのではないかと見当をつけてきたのだった。
 おれのとっさの出まかせに騙された男たちは見張りの一人を残して出ていく。見張りを金的蹴りで倒した俺はマチ子とユリを救い出すことに成功。
 俺はマチ子と交際することになったので、もう下着集めをすることもない。
メスーノ専制帝国の罠  3年前の大革命で完全な女性主導社会が成立。テレビ番組も統制され、女に男がひれ伏す、私のような男にとってはまるで退屈なドラマばかりになった。私が配給の酒を切らして毒づいていると、突然テレビから「男による革命後」を称える未来の映像が流れてくる。
 大型ジェット機の貨物室から数珠つなぎの全裸の女が、男の鞭で追い立てられてゆく。彼女たちは死刑囚。大型トレーラーから曳き出される全裸女たちは競売にかけられる。何年か後に男による革命が成功し、支配層にいた女は処刑、それ以外の女は奴隷として競売にかけられることになったというのだ。
 広場で次々と十字架に磔処刑される女性の姿に、最初は好奇心で見入っていたが、あまりの残酷な映像にやがて私の中は悔恨と祈りだけになった。
 そこをだしぬけに女性警官に踏み込まれる。逮捕の理由は潜在的な性反逆罪、女性侮辱罪。椅子の下に仕掛けられていたセンサーが、このテスト映像を見た私の本性を暴き出したというのだった。男である私にはなにひとつ抗弁することなどできない社会なのだ。
札束は悪魔の手先 -醜男の執念-

 OLの洋子は経理課のハンサムな邦夫と婚約していたが、同じ経理課のチビで醜男・寺下に言い寄られていた。寺下は洋子に繰り返し言い寄っては「邦夫はあなたを不幸にする」と言うが、洋子は取り合わず邦夫と結婚する。
 邦夫は株の損失で会社の金を50万円使いこんでいた。来週の監査までに用意できなければ会社をクビだ。寺下が宝くじで200万円を当てたという噂を聞きつけ、洋子は独断で寺下に頼み込む。
 寺島に指定された高級ホテルで、寺下は「担保を見せろ」と脱衣を要求。全裸の洋子を後手に縛り、床にばらまいた1万円札を口で集めた分だけくれてやるという。這いずってお札と格闘する洋子。
 洋子が持ち帰った金で、邦夫の使い込みは埋めることができた。金の出どころを知らない邦夫ははしゃぐばかり。しかし寺島が宝くじに当たったというのはウソで、50万円は寺島が会社から横領したものだった。寺島は邦夫の使い込みを知っており、いずれ洋子が借金の申し込みに来ると予想して、用立ててくれていたのだ。
 寺島が会社を首になったと聞き、洋子は寺島が言った「愛はお金に勝つ」という言葉を証明して見せたことを知る。

62

いやらしい眼  -異常な寝室-

老富豪との賭けに勝った俺は、彼の若い妻を一晩自由にできることになる。富豪の寝室で、彼女を迎えるが、言う事を聞かない。縛りあげ、鼻に火のついたタバコを突っ込んで拷問。やり過ぎたと思った俺の態度が通じたのか、彼女は俺を受け入れてくれる。
 翌朝、俺は彼女が目覚める前に立ち去る。
 彼女は、洋服ダンスの中で亡くなっている富豪を見つける。覗き見していて興奮しすぎたのだろう。ミイラのような夫の目に「いやらしい眼」と言い放つ妻。

鼻には鼻を -奇妙な復讐-  私・苗字が端(ハナ)は自分の鼻の形が不格好であることを自覚している。がしかし、芥川の「鼻」を持ち出して面と向かってバカにした律子のことは許せない。たとえ律子がどんなに鼻の形も顔の形も美しく、それが社長令嬢であっても。目には目を、鼻には鼻を――。
そもそも律子は私が他の男のように律子の崇拝者となってないことが気に入らないらしいのだ。私は律子をドライブに誘い出す。車中で律子は歌詞に花=鼻が出てくる歌ばかりを歌う。睡眠薬入りのコーヒーで眠らせてから自宅へ戻る。全裸で後手に縛った律子を、畳と床板をめくりあげた床下のタタキの上に座らせ、穴を開けた畳を戻して、畳の上に彼女の顔だけが出た状態にした。目を覚ました彼女は激怒するが、私が座っている畳を跳ね上げる力はない。さらに私は彼女に「処女をいただいた」と噓をついた。私はいまだに童貞だし、復讐は彼女の鼻に対してのみ行うつもりだからだ。
私は谷崎潤一郎の「武州公密話」で戦場で倒した敵の鼻を削ぐ話を語り聞かせ、これから彼女の鼻を削ぐと宣言する。彼女の鼻に突き付けたゾリンゲンの剃刀に恐怖した律子はこれまでのことを謝罪し態度を改めると誓う。「ハナさんの鼻のことはもう決して」バカにされてるようだがしょうがない。剃刀を納めてやると安心したのか律子は失神。その間に彼女の鼻を赤く塗ってやった。目覚めた律子にオレといつでも寝るとまで約束させてから、彼女を開放してやった。床下には彼女の小便の水たまりが残されていた。
1か月後、俺は会社を首になる。律子の告げ口だろう。また別の手で律子に復讐してやろう。
闇のしたたり -発狂椅子-
タロの恋 -混血哀歌-  タロはパパが孤児院から貰い受けてきた白人混血の少年。雑用係であり、尻も捧げさせられていた。
 闇の権力者であるパパは、目をつけた女を片端から連れ込んでは地下牢で飼い、タロに世話をさせていた。
 ある日、パパが連れ帰った女性はタロが孤児院時代に「お姉さま」と密かに慕った女性だった。慰問に訪れてくれる彼女の存在がタロの心の支えだったのだ。
 従順だったタロの態度が硬化したことに気づいたパパは、タロにお姉さまとの関係を問い詰める。
 お姉さまとの関係を自分だけの美しい思い出にしたかったタロはパパの責めに耐えるが、狡猾なパパの鞭はお姉さまの方に向けられる。
 耐えかねたタロは、ついにパパを背後から刺す。
63 クリスマスイヴに悪魔がくる  クリスマスに浮かれる銀座で、浩司は恋人・初子とケンカ別れする。キャバレーに入った浩司がひとり飲んでいると、悪魔が声を掛けてきた。悪魔は、世界中で日本人だけがキリストを信じてないのにクリスマスに浮かれてると聞いて、出稼ぎに来たのだという。浩司があらゆる女を呪っていると感じ取った悪魔は、浩司を「女の地獄」に案内すると持ち掛けてくる。酔った勢いで悪魔と契約する浩司。
 そこはたくさんの女が、小鬼によってあらゆる責めを受けている本当の地獄だった。予想外に悲惨な責めの連続にすっかり酔いの冷めてしまう浩司。締めくくりにと曳き出されてきたのは初子だった。初子は浩司と別れた後でヤクザに強姦され殺されてしまった。さらに浩司が「地獄に墜ちろ」と願ったために初子はここに墜とされたのだ。磔にされ腹を裂かれようとする初子の姿に浩司が「やめてくれ」と言ったとたん、契約に従って浩司は悪魔に心臓を奪われる。
 クリスマスの朝、露地で浩司のひからびた死体が見つかる。
(読者コーナー)
代用品じゃつまらない  闇商人からロボットを購入した私。特注で、顔も体も、私を振った女性・ユリそっくりだ。ロボットは自分をマリだと言い張ったが、鞭で調教し、従順なユリに育てた。 しかし従順になるとつまらない。
 私は奴隷調教したロボットのユリを見せつけるために、本物のユリを喫茶店に呼び出す。しかしユリは新しい彼氏を私に見せつけただけで帰ってしまった。 ニセモノの従順なユリに満足できなくなった私はロボットのユリを殺そうとし、逆に殺されてしまう。
 捜査にやって来た二人の刑事。「人間はどうしてロボットに理不尽な要求をするのでしょう?」「ロボットのお前にはわからないさ」
フォルリ城の花嫁
処刑の図 -断頭台の美女-
七つの大罪

イタリアの貧しい写字生(お経を書き写す仕事)であるマルコのもとに突如、悪魔が現れる。悪魔はこの町で堕地獄の罪を犯している七人の女を懲らしめて改心させれば富を約束するという。マルコは申し出を受け入れ、毎夜、悪魔が指名する女の元へと飛んでゆくことになる。

主人を叱ってばかりのおかみさんは大の字に縛り付けてくすぐり責めに。
けちんぼの奥さんは浣腸責めで大放出。
大喰らいの奥さんはご馳走のお預け責めに。
怠け者の仕立て屋の後家は針のベットでお針子達の針責めに

やきもち焼きの姉妹は背中あわせにして木馬責めに。
傲慢な領主のお姫様は手枷首枷で尻打ちに。
最後は好色な修道女。悪魔はこの修道女が淫乱なのだと言うがマルコにはそれが信じられない。悪魔は女の淫乱の証拠を示すために、鉄の処女(内側に鉄釘を植え付けた、人が入るほどの大きさの拷問具)に修道女を入れろという。彼女が処女ならば彼女を鉄釘から神が守るはずだというのだ。断ればマルコは殺されてしまう。全ては最初から悪魔が仕組んだ罠だったのだ。ついに鉄の処女が閉められるが、修道女は本当に処女だったので悪魔の力を跳ね返す。

裏切り -恐怖と闘争-

ファンは、囚人。将校から呼び出され、地下組織の指導者の情婦、マグダの訊問を命ぜられる。口を割らさないと、自分が銃殺される。時間制限は5時間。ファンは元組織のメンバーだった。かつて自分が拷問に屈服した部屋。マグダは、素晴らしいプロポーションの持ち主。精神の美しさ、強固な意志。マグダを吊り、下着一枚にして、鞭を振るうファン。見守る将校、医者。
投稿 田所表川様
異端の城 1773年9月、南仏プロバンスのラ・コスト村。パリから招かれた二十歳過ぎの家庭教師、ジュリエット・ド・ペルシエは、侯爵の私生活を探る秘密の任務を帯びていた。城主の侯爵は30過ぎの伊達男だった。ジュリエットは、罠に陥り、昼は教師、夜は奴隷の身となるのだった……。
投稿 田所表川様
大都会の夜の底で・・・
-蝕まれる青春-
恋人たちのオリ

帰宅した若妻・久子は夫・健吉から「山根」という男のことを尋ねられる。久子はそんな男は知らないと答えたが、山根は久子の浮気相手であり、その山根は健吉に捕らえられて地下室に全裸監禁されていた。久子も隣の檻に閉じ込められる。
 健吉は「二人の愛を実験する」という。 山根は24時間監禁されたままだが、久子への待遇は次第に向上して、入浴を許され昼間は家事のために檻から出られるようになる。 久子の帰りを待つだけの山根は、次第に久子への猜疑心を持ち始め、久子も山根から心が離れていく。 遂に久子は、健吉が求めるまま山根を始末することに同意する。

(大幅加筆された単行本「恋人たちの檻」ではオチが改変されています)

奇妙な実験 -SM夫婦-  私は妻景子と、結婚以来ふたりだけのひそやかなプレイを楽しんでいたが、ある日、一歩外へ踏み出す。
 繁華街の入り口で車から降りたつ。白足袋・島田のかつら・厚化粧、八百屋お七に扮した妻は、本縄で縛られている。私は、捨札を左手にかかげ、草鞋履きの非人姿。縄尻を取って、いざ市中引き回し……
投稿 田所表川様
64 地図にない村  山歩きに来たOL・友子と美枝は道に迷い、山中の閑散とした小さな村へとたどりつく。宿を見つけるが、案内されたのは畳も腐ったボロ部屋。
 洞窟の温泉で入浴中のふたりのところに、次々と村人が押し寄せてくる。狭い岩風呂の中でついに本性を現す村人。ここは迷い込んできた女を村人総出で輪姦することが当たり前の村だったのだ。
 温泉から引きずり出された全裸のふたりは後手縛りで民家へと連れ込まれる。梁から吊るされたふたりの周りで酒盛りを始める村人。裸踊りを拒否したふたりは囲炉裏の上で煙責めにされる。強姦する順番のクジを始める村人。
 翌日、錯乱したふたりが発見されたという新聞記事が出る。
ご隠居のたのしみ
葬送行進曲
三度目の正直

ケートヒェンは木こりの娘。けちん坊な継母の分までパンを食べてしまったので、お仕置きをされました。これを不憫に思ったマリア様はケートヒェンを天国へ連れて行ってくれました。ケートヒェンは天国で何不自由なく暮らしていましたが、マリア様から「ここだけは見てはいけない」と言われた部屋の中を見てしましました。それなのにケートヒェンは「見てない」とうそをついたので、罰としてケートヒェンは地上に戻され、おしにされていばらの森に落とされました。

いばらの森でひもじい生活を送ったケートヒェンは、狩りに来た王様に見初められ、助け出されて結婚する。女王となったケートヒェンは3人の子供を授かるのですが、授かるたびに「部屋の中を見たことを謝りなさい」というマリア様に逆らったので、子供を取り上げられてしまいます。

女王は生まれた子供を食べていると噂されたケートヒェンは、ついに火あぶりの刑に。初めて懺悔をしたケートヒェンはすべてを許されて、王様と仲良く暮らしました。

指名された女 第二次大戦中のドイツ。激戦地から休暇を得て久しぶりに帰国したナチス兵のハンス。村はすでに敗戦ムードで食糧難。ハンスが背負っている袋の中に帰休兵用の食料が入ってると知っている村人の視線が痛い。 ハンスはナチス将校の妻・シュトラッサー夫人の自宅を訪れる。
村人は食べるものに事欠いているのに、将校夫人は優雅な暮らしを送っていた。 ナチスには「優秀な兵士は褒美として、指名した女性と寝る権利が与えられる」という法律があった。ハンスは面識のない夫人を指名するためにやってきたのだ。ハンスの目的は、戦友・パウルに代わって夫人を嬲ることだった。
パウルが憧れだった夫人を指名した時に、彼女はパウルを言いくるめてこれを先延ばしにしたのだ。しかし次のチャンスは訪れることなく、パウルは戦死。夫人が将校夫人の立場を利用して、パウルが帰ってこれない激戦地に送り出したからだった。
戦場がいかに苛酷な場所であるかを切々と語るハンス。
そしてハンスが袋から取り出したものはパウルの右手だった。戦車に轢かれたパウルは右手しか残らなかったのだ。戦友に代わって、ハンスはパウルが憧れた夫人に触れてゆく。パウルの残した右手で。
ファンタジア・マゾヒスティカ
第1章「奴隷船」は、満員電車を奴隷船に見立てた女性のモノローグ。
第2章「調教」はオリンピックを目指す女性が男性コーチにしごかれる姿を調教に見立てたモノローグ。
第3章「拷問」は帝王切開の出産をまな板の上の魚に見立てたモノローグ。
いずれもSMかなと思わせておいて、実は~と。
花氷(はなごおり) 小説家の倉田は高原の別荘で妻・康子とのプレイ中。倉田は康子の妹の玲子に目をつけており、玲子を別荘に呼び出すよう康子に命じる。嫌がる康子だが倉谷は逆らえない。
康子の避暑地への誘いの手紙に応じて玲子はやってくるが、別荘は倉田だけで康子の姿がない。倉田は康子が作った氷細工の白鳥を見せる。さらに、康子に氷細工を教えてくれた職人と康子が浮気をしていたことを告げ、康子を殺して氷漬けにした巨大な氷柱を見せつける。気泡のない美しい氷漬けを作る苦労を得々と語る倉田。
失神する玲子。
玲子が目覚めるとそこに康子がいる。すべて玲子の夢だったのだ。
読者にだけ、氷漬けの康子が倉田の作らせた模型であり、倉田の仕組んだドッキリだったことが明かされる。
康子もまたこんなドッキリをに興奮するマゾとして開眼していた。
月が見ていた

 雨宿りをしている男女。呉服屋のお嬢様・お園は手代の嘉助と駆け落ちしたのだ。呼び止めた駕籠屋は脱走犯が化けたもので、嘉助はお園と有り金を奪い去られてしまう。破れ寺で犯されたお園。雨はやんで美しい月が出ていた。お園は強引に、脱走犯の市助の妻にされてしまう。
 5年後、地方の温泉宿の経営者に収まった市助とお園。これをついに見つけ出した嘉助は一般客を装って市助を岸壁に呼び出し、突き落とす。嘉助はお園を取り返したのだ。月夜の晩だった。

陰画 「私」は喫茶店で男に声をかけられる。男は記憶障害があり、先日、私と会った覚えだけがあるので、その時のことを思い出させてほしいという。 私は男・木津のことを覚えていたが、 知らないと追い返してしまう。
 数日前、私は木津がこの店でこっそりSM雑誌を読んでいるのを見つけて、声をかけ、SM談義の末に意気投合していた。木津のSM論は面白いが実践経験はないという。 木津のSM論に押され気味だった私は、見栄を張って妻を提供すると言ってしまう。 木津を自宅に招き、縛って木津に差し出す。木津は最初は遠慮していたが、やがてベルトを抜くと強烈に妻を鞭打ち始める。慌てた私に制止された木津は我に返ると、そのまま帰ってしまう。
 プレイをSM雑誌にしか求められない「陰画」の世界に住む木津にとって、今日の経験は人生最高の「陽画」だったろう。 日常的に妻を縛ることができる世界に住む私は、今回は引き返すことができたけれど、私もいつタブーを破らないとは限らない。
 私と木津も表裏一体なのだ。
顔のない女   若妻・千秋は夫・鈴屋の友人である加古と浮気をしていた。鈴屋と加古はSM趣味を持つ点で共通していたが、鈴屋は結婚3年目にもなるのに、千秋を一度も抱かせてもらってないばかりか、SM雑誌を読んでいることを叱り飛ばされたことすらあった。自分の方を向いてくれない千秋は、鈴屋にとって背中の姿だけの存在になっていた。
 加古は王朝時代の物語(侯爵が部下の妻と浮気しているときに、その部下が偶然寝室に挨拶に来たので、顔を隠して女の体だけをじっくり見せてやるのだが、愚かな部下は女の体をほめちぎるばかりで最後まで妻だと気づかなかった)を持ち出して、千秋だと分からないようにして加古とのプレイを鈴屋に見せつけてやるのはどうかと冗談半分に提案する。意外にもこれを承諾する千秋。
 後手に縛られ能面をつけただけの誰ともわからぬ女(千秋)の後ろ姿に、鈴屋は思い描いていた理想の女性の姿を見て感嘆する。千秋は結婚指輪をつけていたのだが、それにすら気づかない鈴屋。鈴屋は女に手を出しかねていたが、加古には女と鈴屋の間を繋いだ細い絆の糸が、繭のようにふたりを覆い隠してまうのが見えた。
 鈴屋が千秋だと気づいたのは爪だった。千秋が気づかないところで夫との絆は存在したのだ。
「僕も顔のない女を見過ぎていたようだ。今夜から、千秋に顔のある女になってもらうかな」
 鈴屋のこの言葉に愛を確信した千秋。ふたりの蜜月がようやくはじまる。
65 魔女検察官
サスペンスマガジン
65 絆(きずな)
贄(にえ)
悪魔の贈り物
不適応者の群れ
66 じゃじゃ馬ならし
67 大都会の夜の底で
裏切り
「オー嬢の物語」について
紐の効用 S君は某大学文学部助教授。結婚一年目。教え子が恋人となり,花嫁となり,新妻となり,ただの女房になる。この女房,とにかくおしゃべり。愛する妻を機嫌を損じないで,このおしゃべりから解放される方法を模索する。「しごきを二,三本出してくれないか」夕食後のプレイ。だんだんならして縛る。二十日め。最終目的の猿轡。縛ってふとんに入れる。これで心静かに好きな読書にふけることができる。
投稿 田所表川様
おそれ
パパの女
68 プロバンスの異端の城
69 縄と毒薬
72 堕天使の誘い

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